3分遅れのアンダンテ
「奏音ちゃん、好きだよ」
「……へっ?」
祈先輩の声だけが私の中に響き渡った。
「引っ越し落ち着いたら、連絡するね」
発車の時刻が迫り、電車に乗り込んだ先輩がそう言った。
「祈先輩……」
「ずっと奏音ちゃんのことが好きだったよ」
「私も、私もずっと祈先輩のことが好きでした。今も、離れるのが寂しいくらい大好きです…」
言えた。
伝えられた、私の気持ち。
「休みになったらまた会おう。一緒にデートに行こう。またね、奏音ちゃん」
「楽しみにしてます、祈先輩っ」
電車のドアが閉まる。
最後の言葉は祈先輩に聞こえていたかわからない。
祈先輩はドアの窓越しに笑顔で手を振ってくれた。
祈先輩が"好きだよ"と言ってくれた気がした。