もう誰かを愛せはしない
「俺は医者になるつもりなんかなかったんだよ。何か堅苦しいイメージじゃね?医者って」

「確かにね。華やかではないかな」

「でも…」



礼羽は空を仰ぐとフゥッ…とひと息ついた。




「俺は中学生の時、大切な人を病気で失った。その時、俺が医者になってもう誰かの大切な人を死なせたりしないって思ったんだ。…それだけだよ」



それだけって…。


医者になるのは容易い事じゃない。




いくら礼羽が頭が良いからって簡単に医者になれるワケじゃない。



それほどまでに礼羽を突き動かした人って…





「まっ、俺は頭いいからな。メイサと違って」



礼羽はイタズラな笑みを浮かべると、私の髪をクシャクシャと撫でた。




「…ねぇ。ライハの大切な人って…誰?」



元カノとか好きだった人って言われたらどうしよう…


と思ったけど、聞かずにはいられなかった。




「ん?…友達だよ」



そう言われてホッとした。



礼羽には、礼羽の人生を突き動かせる素敵な友達がいたんだね。







そう思って安心しきっていた私は


この時、礼羽がどんな顔をしていたのか気付きもしなかった。
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