シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
「これで、タイセイはエリザベス王女の前に出てもおかしくない、紳士になったわ」
チーフに見立てて、エラが差し込んだ紙の白が、確かにタイセイのジャケットのモスグリーンを鮮やかに際立てる。
「ティーをご一緒できるなんて、光栄でございます。女王様」
顔に満面の笑みを広げながら、大業なしぐさで礼をするタイセイ。なんてかわいい笑顔なの…。心にかけた施錠が砕けそうになったエラは、あわてて視線をそらす。礼を返すのも忘れてせわしくティーカップを口に運ぶ作業を続けた。
アフタヌーン・ティーを飲み終わると、二人はザ・ペニンシュラ香港を出て、アベニュー・オブ・スターズ(星光大道)へ。
ここは、「香港映画の父」と呼ばれ、1913年に香港初の長編映画「荘子試妻」の監督を務めたライ・マンワイに始まり、ジャッキー・チェンやチョウ・ユンファといった最近の国際的スーパースターに至るまでの、100年を超える香港映画の歴史をたどることができる楽しい通りだ。
ブルース・リー、アニタ・ムイ、マグダル、などの各像が配置されている場所では、対岸の高層ビル群を背景に、観光客が像のポーズをまねて記念写真を撮る姿が多く見られる。
御多分に漏れず、タイセイもなじみ深いスターの前でポーズするが、その姿を早速エラがスケッチし始める。ロンシャンのワンピースを着て、眼帯をしながらも熱心にスケッチするエラの姿は、周りの観光客の目を引いた。それなりに人も集まってきてしまったので、恥ずかしくなったタイセイは、ポーズを解く。
「あん、もう少しで終わるから、動かないでください」
「…といわれても…」
頭を掻きながらエラに近づき、スケッチを覗き込んで彼女に話しかけた。
「ところでさ、エラ…映画はよく観に行くのかい」
「今は忙しくてなかなか行けないけど…昔は、何度か母につれられて映画館に行ったわ」
「そう…ぼくも映画館の雰囲気が好きでね…よく映画を見にいったよ。ある時期なんて毎週観に行っていたな…」
「私の家はお母さんが働いていて忙しかったし、お金もなかったから…三カ月に一回ぐらいだけど、とても楽しかった」
「ふーん…うらやましいな」
そう言ったきり、タイセイが黙り込んでしまったので、エラもスケッチの手を止めて、彼を見た。
チーフに見立てて、エラが差し込んだ紙の白が、確かにタイセイのジャケットのモスグリーンを鮮やかに際立てる。
「ティーをご一緒できるなんて、光栄でございます。女王様」
顔に満面の笑みを広げながら、大業なしぐさで礼をするタイセイ。なんてかわいい笑顔なの…。心にかけた施錠が砕けそうになったエラは、あわてて視線をそらす。礼を返すのも忘れてせわしくティーカップを口に運ぶ作業を続けた。
アフタヌーン・ティーを飲み終わると、二人はザ・ペニンシュラ香港を出て、アベニュー・オブ・スターズ(星光大道)へ。
ここは、「香港映画の父」と呼ばれ、1913年に香港初の長編映画「荘子試妻」の監督を務めたライ・マンワイに始まり、ジャッキー・チェンやチョウ・ユンファといった最近の国際的スーパースターに至るまでの、100年を超える香港映画の歴史をたどることができる楽しい通りだ。
ブルース・リー、アニタ・ムイ、マグダル、などの各像が配置されている場所では、対岸の高層ビル群を背景に、観光客が像のポーズをまねて記念写真を撮る姿が多く見られる。
御多分に漏れず、タイセイもなじみ深いスターの前でポーズするが、その姿を早速エラがスケッチし始める。ロンシャンのワンピースを着て、眼帯をしながらも熱心にスケッチするエラの姿は、周りの観光客の目を引いた。それなりに人も集まってきてしまったので、恥ずかしくなったタイセイは、ポーズを解く。
「あん、もう少しで終わるから、動かないでください」
「…といわれても…」
頭を掻きながらエラに近づき、スケッチを覗き込んで彼女に話しかけた。
「ところでさ、エラ…映画はよく観に行くのかい」
「今は忙しくてなかなか行けないけど…昔は、何度か母につれられて映画館に行ったわ」
「そう…ぼくも映画館の雰囲気が好きでね…よく映画を見にいったよ。ある時期なんて毎週観に行っていたな…」
「私の家はお母さんが働いていて忙しかったし、お金もなかったから…三カ月に一回ぐらいだけど、とても楽しかった」
「ふーん…うらやましいな」
そう言ったきり、タイセイが黙り込んでしまったので、エラもスケッチの手を止めて、彼を見た。