シンデレラの網膜記憶~魔法都市香港にようこそ
「そんなこと…急にいわれましても…いくら高名なドクター纐纈といえども、緊急性がない限り、この国で治療行為をするのは違法になるかと…」
「何言ってるのよ。これは治療じゃないの、セミナーなの。その女の子には、セミナーに協力してもらうだけよ」
「そうなんでしょうけど…ちょっと屁理屈っぽいような…」
「明日の手術手技セミナーまでその患者さんを病室に預かってもらって。入院の費用は私が出すから。術代は私がやるんだから必要ないわよね」
「ドクター…」
「さあ、パネルの時間よ。さっさと病院のスタッフに指示出しなさい。わたしは行くわよ」
慌てるスタッフをロビーに残し、モエは胸を張って歩き出した。
エピローグ 2
父親の葬儀を終えて以来、酒におぼれる日々を送っていたサクチャイ。そんな彼にいよいよ愛想をつかし、彼の妻も子供たちをつれて家を出て行ってしまった。心も体もボロボロで死人同然の彼だったが、たとえ死んだとしても、自身の心に平安が訪れることは決してないということはよくわかっていた。
彼は入り浸りの酒場で気になるニュースを耳にした。昨日ゴルフトーナメントの初日で、ある中国人が驚異的なコースレコードをたたき出しのだ。そのコースレコードは、彼の父がキャディとしてバッグを担いで、あのタイガー・ウッズに達成させたコースレコードと並ぶものだった。
大会2日目。サクチャイが、昼間久しぶりに酒場を出たのは、彼の父が作り上げたコースレコードを脅かす選手とキャディとは、いったいどんな奴なのか興味がわいたのに他ならない。
久しぶりの日差しに目を細めながら、サクチャイはその選手を探した。
彼は4番グリーン上にいた。ボードを見ると彼はすでにスタートホールから三つのバーディーをとっていた。サクチャイは、今日こそ、父とタイガーが築いた栄光のコースレコードを、書き換えらてしまうのではないかと恐れた。
中国人の選手は、4番グリーンのパッティングラインを読んでいた。彼のキャディはただグリーンの外にいて選手を見守るだけ。なんだ、このキャディはただバッグを担ぐだけのカートだ。とすると今まで、すべてのグリーン上のパットラインは、この選手ひとりだけで読んでいたことになる。サクチャイは、ますますこの選手に興味がわき、ギャラリー最前列に進み出た。
「何言ってるのよ。これは治療じゃないの、セミナーなの。その女の子には、セミナーに協力してもらうだけよ」
「そうなんでしょうけど…ちょっと屁理屈っぽいような…」
「明日の手術手技セミナーまでその患者さんを病室に預かってもらって。入院の費用は私が出すから。術代は私がやるんだから必要ないわよね」
「ドクター…」
「さあ、パネルの時間よ。さっさと病院のスタッフに指示出しなさい。わたしは行くわよ」
慌てるスタッフをロビーに残し、モエは胸を張って歩き出した。
エピローグ 2
父親の葬儀を終えて以来、酒におぼれる日々を送っていたサクチャイ。そんな彼にいよいよ愛想をつかし、彼の妻も子供たちをつれて家を出て行ってしまった。心も体もボロボロで死人同然の彼だったが、たとえ死んだとしても、自身の心に平安が訪れることは決してないということはよくわかっていた。
彼は入り浸りの酒場で気になるニュースを耳にした。昨日ゴルフトーナメントの初日で、ある中国人が驚異的なコースレコードをたたき出しのだ。そのコースレコードは、彼の父がキャディとしてバッグを担いで、あのタイガー・ウッズに達成させたコースレコードと並ぶものだった。
大会2日目。サクチャイが、昼間久しぶりに酒場を出たのは、彼の父が作り上げたコースレコードを脅かす選手とキャディとは、いったいどんな奴なのか興味がわいたのに他ならない。
久しぶりの日差しに目を細めながら、サクチャイはその選手を探した。
彼は4番グリーン上にいた。ボードを見ると彼はすでにスタートホールから三つのバーディーをとっていた。サクチャイは、今日こそ、父とタイガーが築いた栄光のコースレコードを、書き換えらてしまうのではないかと恐れた。
中国人の選手は、4番グリーンのパッティングラインを読んでいた。彼のキャディはただグリーンの外にいて選手を見守るだけ。なんだ、このキャディはただバッグを担ぐだけのカートだ。とすると今まで、すべてのグリーン上のパットラインは、この選手ひとりだけで読んでいたことになる。サクチャイは、ますますこの選手に興味がわき、ギャラリー最前列に進み出た。