Magic Love Sea〜俺がお前のこと、攫ってやるよ〜
「先に船に戻っていてくれ」

ディートフリートは二人にそう言い、夕暮れの迫る街を歩く。帰る気分ではなかった。裏路地をぼんやりした頭で進んでいく。

その時、海賊の姿が目に入った。タバコを吹かしながら話している。ディートフリートは物陰に隠れ、その会話を聞いた。そしてニヤリと笑う。

「その話、詳しく聞かせてもらおうか」

ディートフリートは海賊たちに剣を向ける。剣の先が夕陽に照らされ、反射した。



数日後、ミラは海のように青いウェディングドレスを身につけていた。宝石で飾られたそのドレスは美しく、よく似合っている。しかし、ミラの表情は暗かった。

今日はもうミラの結婚式の日だ。海辺の美しい教会で盛大な式が行われる。せっかくの晴れ舞台だが、ミラはため息しかついていない。

「ため息をついてどうしたの?」

いつから控え室にいたのか、ヘンリーが背後から抱き締めてくる。ミラは悲鳴を堪え、「大丈夫です。緊張しているだけですから……」と誤魔化した。
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