【修正版】クールで無表情な同期が十年間恋情を患っていた理由

漂うシトラスの香りに胸がキュンとしめつけられる。

「ありがとう」

「それと、これも時間あるときにチェックしてもらえるかな?」

「わかった」

ピンと伸びた背筋を見送って、小さく息を吐く。

ゆるくパーマのかかった焦げ茶の長い髪。
大き過ぎない二重まぶた。
鼻は少し高めで、いつも笑顔の唇。

高卒で入社した金里さんとは歳が四つ違うけれども、彼女と僕は同期だ。

同じ営業部に配属され、テキパキ働き、気が利いて器量のいい彼女。

別に、飛び抜けて可愛い訳ではないけれど。気がついたら僕の心には、彼女が住み着いていた。
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