青は奇跡
急に浮かんだ考えにひとりで恥ずかしくなっていると、見慣れた光景が増えてきた。
……本当に、もうすぐだ。
あと少し。
家の窓から見えるマンションや、巨大なオブジェ、地域のシンボルの木。
いつも見るだけで安心するだけのそれらは、今日は見たくなかった。
だけど、無情にも電車は止まる。
わたしたちの都合など電車は関係なく線路の上を走る。
「……じゃあまた、今度」
「……うん」
「体には気を付けて」
「……」
「ん?千鶴?」
「あ、ありがとう!
今日、すっごく楽しかった。
また一緒に出掛けよう」
それだけ言うと、電車から急いで降りた。
すぐにドアが閉まり、燦は慌てつつも笑っていた。
手を振り、すっかり紺色に包まれた街の中を歩き出す。