青は奇跡
「千鶴、最近帰り遅いね」
隣で野菜をトントンと刻みながらお母さんが言う。
あまりに自然な言い方で、言わんとしていることが分からない。
「ごめん、ご飯の用意あまりできなくて」
「いいのよ、それくらい。
学生なんだから少しくらい遊びなさい」
野菜を切るのをやめ、鍋をかき混ぜて味見をするお母さんはいつも通りに見える。
たぶん、お母さんはわたしに友達がいなかったことに気付いていた。
親を心配させないように気遣ったつもりが逆に気遣われていた。
何も言えずにじっとお母さんの姿を見つめていると、「だって」と話し出した。
急にお母さんが同年代の女の子のように見えた。
「帰りは遅い日が増えたし、表情も明るいから気付くわよお」
「……そっか」
「大事にしなさいよ、友達のこと」
「うん」
「あと千鶴はもう少し喋りなさい。
千鶴が思っている以上に相手には言葉の真意は伝わっていないんだから。
わたしだって千鶴の母親だけど、千鶴の言いたいことが分からないときもあるわよ。
……あ、これはもう完成ね」