青は奇跡






仕上げに取り掛かるためにお皿に盛りつけるお母さんの姿から自分の手元に目線を落とした。


剥きかけのリンゴを再び手に取り、包丁で皮を剥いていく。




いびつな形のリンゴはわたしの心そのもののように見える。




包丁で周りの皮だけを剥こうとするけれど、まだお母さんほど上手くは出来ない。


残すはずの果実まで皮と一緒にところどころ取れてしまう。




……ごめん、お母さん。


まだ言えない。


今、毎日がすごく楽しいけれど、同時に悩んでいる。





「お母さん」


「ん?」


「いつか……、ちゃんと話すから」


「え?」





ああそうだ、こういうところだ。


会話の前後も考えずに自分の中で完結して他の人もわたしの考えを分かっていると思い込んで話をしてしまうところ。





「今はまだ話す時じゃないと思う。

だけど、話すから。必ず、話す」


「……」


「でも今は、毎日が楽しい。

学校に行くのが本当に楽しい。

……嘘じゃないよ」


「そんなの分かっているわよ。

いつでもいいから話してちょうだい」


「うん」





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