愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
それからの一週間は慌ただしく過ぎていった。
必要な荷物をまとめ、業者に持って行ってもらい、結婚したのだからと役所関係も名義変更をして……。
そして迎えた、一週間後の月曜日。
今日は私ひとりで、先日お見合いをした旅館前に立っていた。
今日から名護さんと一緒に暮らすんだ……。
でも正直、この前のあの冷ややかな表情から、夫婦として仲睦まじく暮らせる図が浮かんでこない。
彼自身の態度も、仕事の延長といった感じだったし。
「奥様、お疲れ様でございます。副社長はあちらにいらっしゃいます」
そう案内してくれるのは、スーツ姿の初老の男性。
今回名護さんの指示でわざわざ私の地元からここまで送迎に来てくれた人だ。
電車を乗り継いで来るより楽だろう、と気遣ってくれるあたりいい人ではあるんだろうけど。
『奥様』、なんて慣れない響きがむず痒い。
男性に案内され、旅館の裏へと回る。
そして細い道を歩いていくと、旅館から徒歩数分のところに家がひとつ建っていた。
まだ新しそうな、2階建ての一軒家。
周囲を白い壁で囲った横に大きな和風建築のその家は、ベージュの外壁と木材がバランスよく見えどこかモダンな印象的だ。
「り、立派な家……」
思わず口に出てしまった。
「中で副社長がお待ちですので。私はここで失礼いたします」
深々とお辞儀をする男性に私はお礼を言ってから、黒い門をくぐった。
敷地へ踏み込み真っ白な石畳を横目に玄関へ向かい歩いていくと、中からドアが開けられる。