愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
「来たか。お疲れ」
そこには先日同様スーツ姿の名護さんがいた。
冬子さんがいないためか、先日は常に敬語だった言葉も少し柔らかい印象だ。
「わざわざ送迎の車までいただいてありがとうございました」
「いや、いい。電車だと乗り継ぎも面倒だしな」
スリッパを用意しながら「どうぞ」と中へ入るよう促す彼に、私はパンプスを脱ぎ家にあがる。
「お邪魔します」
私たち以外はいないのだろう、静かな廊下にはふたりの声だけが響く。
「ここにおひとりで住まれてるんですか?」
「あぁ。以前は両親も住んでいたが、今はふたりは主に都内の家にいるんだ」
「都内にもおうちがあるんですか」
「といっても向こうはマンションだけどな。あと北海道と沖縄に一軒ずつある」
「は、はぁ……」
そんなにたくさん家が……!?
自分が育ってきた環境との違いにあっけにとられながら、名護さんについて家中を歩き回る。
一階の端から、客間、トイレ、浴室。
そこから坪庭を見ながら階段で二階に行くと一番奥に彼の書斎と寝室がある。
全体的に和モダンな雰囲気で、どの部屋も天井はあまり高くない。けれど大きな窓から外がよく見えて開放感がある。