愛艶婚~お見合い夫婦は営まない~
はっ、私自己紹介がまだだった。
「申し遅れました、杉田春生と申します!」
座ったまま深々とお辞儀をする、そんな私を名護さんはじっと見つめる。
無言で見られると緊張する……ほかになにか、自己紹介らしいことを言わなきゃ!
「以前は都内で英語教師として働いてまして、家事全般が得意です!えっと……あっ、座右の銘は『人生楽しんだもん勝ち』です!」
あがってしまいつい余計なことまで言ってしまった。
そうはっとした時には、彼は私に対して冷ややかな眼差しを向けていた。
その視線ひとつで分かる。バカっぽいなって呆れられてるな……と。
凍りつきそうな空気に冬子さんも慌ててフォローを入れる。
「ご、ごめんなさいね、うちの子ポジティブで……!」
「いえ、前向きなのはいいことです」
そういいながらもやはり彼の顔は真顔のまま。
あぁ、出だしからやってしまった……。
それから三人で少し話をした。
といっても話していたのはほとんど冬子さんと彼で、主に彼の会社のことや杉田屋のことなど、ビジネス的な話題だ。
私が得た情報といえば、彼の年齢が30歳だということくらい。
しばらくすると、名護さんは左手の高級そうな腕時計をチラリと確認した。