にびいろのなかのひかり 鈍色の中の光

「先生…」



「あ!美波さん!」



気まずい…



「同じ職場の…」

先生が隣の女性に私のことを
濁して言った



「はじめまして…」


小柄で可愛らしい女性



「はじめまして…
いつもお世話になってます」



えっと、腕組んでる?

ってことは???




それより


原さん

先生を知ってる



先生と私のことも




きっと嫌な気分だろーな…




「こんばんは」

先生が原さんに声を掛けた



「こんばんは」



気まずい…



「じゃあ、先生…また…」




「え…、先生って?」

先生の隣にいた女性が言った



え、なんか、余計なこと言った?






九條先生の顔を見たら咳払いした




「九條さん、先生…なんですか?」

女性が先生に聞いた




「あ、あだ名?
ニックネーム…?です」

先生より先に答えた

適当にごまかそ…




なに?

このふたりの関係?


腕組んでるのに

なんの仕事してるか知らないの?


え、












「この前、話した
いい店の人
美波さんに話したじゃん!」

私が聞く前に先生が言った



話したけど…



「優しい味のお店の…?」



「そおそお!
よかったら今度ふたりで行ってよ」

先生は原さんを見ながら言った



「あ、でも…
そっちもおいしいですよね
困ってないか…」

今度は、原さんに言った



先生
余計なこと言わないで!



原さんは黙ってた




「今度、4人で飲みませんか?
あの焼き鳥屋で…
じゃ…」

そう言って先生は去って行った




カートのカゴには

ひじきとかお麩とか昆布とか

体にいいものがたくさん入ってた




きっと
優しい味なんだろうな…


きっと
優しい人なんだろうな…




先生のこと
ドクターって知らなかった


医者だからって
近付いてくる女の人もいるけど




ホントの先生が

好きなんだろうな…




ホントの先生を

知ってるんだろうな…






< 360 / 555 >

この作品をシェア

pagetop