呑みますか、呑みませんか。

 会社じゃなくても、タマキさんは、タマキさんで。

 営業部のルーキーさんで。


「無理にとは、言わないけど。もうちょっと。……素で接して欲しさはある」


 いいの?


「わ、わかりまし……じゃなくて。わかった」

「ありがと」

「タマキさんも素でいいから……ね?」

「俺はわりと素だな」

「そっか」

「タマキさんってのも。よそよそしい」


 と、言われても。

 他になんて呼べばいいの?


「……タマキ、くん?」

「名前でもいい。って。知らないか」


 …………知ってる。


「チヒロくん」

「知ってたんだな」

「うん。漢字でも。……書けるよ?」

「オギノタマキ」

「……っ、え、知ってたの?」

「他の同期に名前で呼ばれてたの聞いて。反応したことがあって」


 玉置知紘と荻野環


「もし、さ」


 チヒロくんが、顔をあげる。


「俺らが一緒になったら。タマキタマキになるかもな?」
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