呑みますか、呑みませんか。

「…………へ」

「ウケる」


 そこ、笑うところですか!?


 というかその例え話にドキリとしたんですけど。


「チヒロくんが、いろんな人に呼ばれるとき。反応しがちだし。自分がタマキさんって呼ぶのも。実は違和感あったり」

「小学生のとき。ヨシミって名字の男子と、ヨシミちゃんって名前の子がいた」

「わたしも会ったことある。名前っぽい苗字の子や。苗字にある名前の子」


「おお。ハイペース」


 グビッとお酒を飲むわたしをみて、口角をあげたチヒロくん。


「今夜は。ここにある日本酒を制覇しちゃおうかな」

「やってみなよ」


 わたし、誰の前でも、こんなことしないですよ?


「どれが好きそう?」

「そうだなあ。わたしは……」


 日本酒も、美味しいけれど。


「ん?」


 目の前のあなたが気になって仕方ないって言ったら、困りますか。


「やっぱり甘いのかな」

「辛口は苦手?」

「ううん。お料理と合わせるならちょうどよかった」

「しかし。酔わないねえ」


 わたしが酔っぱらうの待ってるのかな。


「チヒロくんは。少し、冷めた?」

「いいや。まったく」

「そっか」

「ガードかたいよね」

「え?」

「服装もそうだけど。俺の家にあっさりついてきた割には。適度に距離感保って。始発で帰ってく」
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