冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい

実力が拮抗して交戦が長引く中、武力だけでは厳しいと判断し、私を標的に定めたのか。

たしかに隣国がレウル様に近しい身内を捕らえれば、アルソートは完全に不利になる。

国民の命や領地を守るためなら、陛下はときに冷酷非情な青い薔薇の名に相応しい振る舞いで国の未来を取るであろう。

しかし、彼は正しい道を選び取る実力がありながら優しすぎる。私を救うためなら自らの退位を受け入れ、この戦いを終えると言いだすかもしれない。

ここで捕まったら、陛下や騎士団、医師部隊の仲間の努力が全て水の泡だ。


「わかりました。すぐにここを出ましょう」


しかし、頷いてエプロンを解いた瞬間、テントの外から叫び声が聞こえてくる。

交わる刃の音が響き、テントの幕を切り裂くように現れたのは数人の男だった。その軍服には隣国の腕章が付いている。

まずい、すぐ側まで来ていたの……!?

手当てを受けていた騎士が、怪我をおしてなんとか男たちを食い止める。護衛に着くはずだった若い騎士も、仲間を庇うように隣国兵の攻撃を剣で受け止めた。


私がここにいたら、後方支援の人たちも巻き添えにしてしまう。もし、ひとりで森へ逃げ込めば敵を引きつけられるかもしれない。手負いとはいえ、アスランが鍛えた騎士達がいれば、きっとテントの占拠は免れる。

ここにいる人たちだけでも守らなければ。


「すみません、後は頼みます」

「ランシュアさま!?」

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