冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
聞き慣れない言語の野太い声に顔を上げると、仲間と分かれて捜索していたらしい隣国兵が立っていた。
全身の血の気が引いて、恐怖で声すら出ない。
いっそのこと自害のための毒薬でも入っていれば迷わず飲んだのに。優しいあの人は、そんな仕掛けを施すはずがなかった。
私は、少しでも役に立てただろうか?
国のために懸命に戦うあの人の力になれたかな。
勝利を確信したような瞳がこちらをとらえた。強引な腕がこちらへ伸びる。
もう逃げられない。
『ぐっ!』
希望を失いかけたその時、男が勢いよくのけぞった。襟元を掴んでいるのは、心の中でずっと名を呼んでいたレウル様だ。怒りを宿した青い瞳が隣国兵を睨みつけている。
これは走馬灯?いや、違う。本物だ。
正面を向かせ、みぞおちを殴りつけたレウル様は、そのまま近くの木に向けて男を蹴り飛ばした。
隣国兵は、幹に強く背中を打ち付けられて気を失ったようにずるずると地面に沈んでいく。
目の前の彼はわずかに息があがっていて、上着のあらゆる箇所が血で汚れていた。短い呼吸の後、ふっと視線をおろされる。
目が合った瞬間、張りつめていた緊張の糸が切れたように、力強い腕が私を抱きしめた。