冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
「レウル、さま」
名を呟くと、存在を確かめるように背中を撫でる大きな手。首元にかかる息が熱い。
どうしてここに?
ひとりで来たの?
かけたい言葉を次々と頭に浮かべていると、耳元で荒い呼吸混じりの声が聞こえた。
「アスランから、敵の狙いが君だと聞いた。万が一に備えて向かうべきだと、あいつが部隊の指揮を預かってくれたんだ」
「アスランが?」
「ああ。護衛を向かわせたと聞いたけど、予想以上にテント襲撃の兵の数が多いようだったから……間に合ってよかった」
心から安心したような声。
それを聞いた瞬間、ぽろぽろと涙が溢れた。
二度と触れられないと思っていた温もりが、しっかりと服越しに伝わってくる。
「あの、どうしてこの時計を預けたのですか?」
「ランシュアがどこにいるか見つけられるようにだよ。君に危険が差し迫るのは、俺が側にいないときだろうからな」
懐中時計はアルソートの鉱山でとれる鉱石を使った特殊な文字盤でできていた。空気に触れると強い光を放つようで、夜間でも時刻が見えやすく、ライト代わりにもなるらしい。
その光を目印に駆けつけてくれるなんて。たとえ近くにいなくても、私は常に守られていたんだ。