冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
二度の銃声。
痛みを覚悟したものの、体に異常はない。
まさか、逸れた弾がレウル様に……!?
嫌な予感とともに顔を上げる。
しかし、彼は苦痛に顔を歪めるわけでもなく、ただ驚いたように一点を見つめていた。その視線の先には細く煙を上げる銃口だ。
隣国兵の拳銃ではなく、その背後に立つ男性のものだった。
『止まれ!これより一切の交戦を禁ずる』
空に向けて威嚇射撃をした男性が高らかに言い放つ。その言語は隣国のものでもアルソートのものでもなく、流暢な公用語だ。
その場にいた全員が動きを止め、男性へと注目が集まった。後ろにはふたりの補佐官が控えており、三人が軍服の上に羽織るロングコートには、サメノア国のバッジが付いている。
三人組の正体を察した瞬間、上官らしき男が冷静に続けた。
『我らは国際裁判機関の使者である。昨夜、アルソート国のドレイク=ハヴァード氏が商船炎上事件に関する隣国側の“不正情報”を提出した。ハルトヴィッヒ王にも伝令を飛ばし、両軍は互いに交戦をやめ、自国へ移動を開始している。今後は、事の審議を追及するため、レウル=クロウィド陛下に我が国へご足労願いたい』