冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい


ほら。こうやってすぐ翻弄してくる。

冗談に振り回されるのは心臓に悪い。

さっきのキスは、いわば見せつけに近かった。嫌味を切り抜ける手段として(てい)良くあしらっただけだろう。事を荒立てないように、かといって黙るわけでもなく。そんなパフォーマンスの一環だ。

大丈夫。この関係はビジネスだと理解しているから勘違いなんてしない。


「ランシュア。どうして酒を飲んだ?単純に興味があったわけじゃないだろう?」


バルコニーの手すりに頬杖をつきながら顔を覗き込まれる。きっと言うまで逃す気はないのだ。

視線に負け、おずおずと口を開く。


「レウル様が困っているように見えたので」

「困る?」

「はい。グラスを差し出されたときに表情がこわばった気がして。もしかしたら、アルコールが得意ではないのかなって思ったんです」


数回まばたきをした彼は、やがて軽く目を細めた。


「いや、酒は嫌いじゃないよ。俺が避けたのは薔薇のほう」

「薔薇?」

「ああ。すごいな。見破られるなんて思わなかった」

< 54 / 196 >

この作品をシェア

pagetop