冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
ほら。こうやってすぐ翻弄してくる。
冗談に振り回されるのは心臓に悪い。
さっきのキスは、いわば見せつけに近かった。嫌味を切り抜ける手段として体良くあしらっただけだろう。事を荒立てないように、かといって黙るわけでもなく。そんなパフォーマンスの一環だ。
大丈夫。この関係はビジネスだと理解しているから勘違いなんてしない。
「ランシュア。どうして酒を飲んだ?単純に興味があったわけじゃないだろう?」
バルコニーの手すりに頬杖をつきながら顔を覗き込まれる。きっと言うまで逃す気はないのだ。
視線に負け、おずおずと口を開く。
「レウル様が困っているように見えたので」
「困る?」
「はい。グラスを差し出されたときに表情がこわばった気がして。もしかしたら、アルコールが得意ではないのかなって思ったんです」
数回まばたきをした彼は、やがて軽く目を細めた。
「いや、酒は嫌いじゃないよ。俺が避けたのは薔薇のほう」
「薔薇?」
「ああ。すごいな。見破られるなんて思わなかった」