冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
話によると、夜会の会場でも正体不明の視線を感じていたらしく、おびき寄せるためにわざとひとけのない部屋に戻り、罠をはったらしい。
護身用の短剣はいつも懐に忍ばせているようで、扱いにも慣れているという。
「会場で君と懇意であるとみせつければ、気を許した女性に漏らす情報や隙を狙ってくるだろうと思ってな」
「じゃあ、あのキスも?」
「ああ。ダルトンさんへの反撃って意味もあったけど本命はそっちだ」
信じられない。全て計算されていたなんて。
スパイの存在にいち早く気づいた彼はこの策を思いつき、ゲスト達のいない場所で始末しようとしたのだ。
夜会では警備の人員を増やしているそうだが、その目をかいくぐって忍び込むなんて相手は相当の手練れだろう。レウル様いわく、こんな所業ができるのは特殊教育を受けた他国の駒だけらしい。
こっちはそんな気配はまったく感じなかった。
もしかしてビジネスパートナーとしての話題を避けたのも、盗み聞きされていると知っていたから?
素性もわからない人間が近くに迫っていたと知り背筋が震える。王宮はこういう事件がよくあるの?最悪の場合、命の危険にさらされていたかもしれない。
「大丈夫。もう怖くない」