冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
「そんなに落ち込まないでまくれ。そうだ、俺じゃなくて宮廷医師に弟子入りしたらどうだ?看護の技術なら今後役立つかもしれないし。後で紹介してやるよ」
「なるほど。たしかに、応急処置を身に付けておいた方が役に立てるかもしれません」
新たな視点からの助言に希望を抱いたその時、視線の先にバケツと雑巾が見えた。騎士団長のアスランが持っているにしては不自然である。
「その用具はどうしたの?どこか掃除をするつもり?」
「あぁ。庭にある石碑をちょっとな」
アスランの話では、革命を忘れないために先代の王が建てた石碑があるらしい。長い歴史の中で一番国が揺れ動いた戦いは多くの犠牲を払い、王都は戦禍に巻き込まれたと聞く。
生まれる前の話だとはいえど二十五年前は決して古い過去ではなく、爪痕が残る地域が多いのが現状だ。
「当時十才だった俺は、民衆の思いを背負って戦い抜いた革命軍に感動してさ。先代の王が自警のための騎士団を作ると聞いてすぐに志願したんだ。入ったあともしばらくは荷物運びだったけど」
「すごいわね。今じゃあ、立派な騎士団長だもの」
「ははっ!まぁな。でも、俺はただ、目指したい背中を追いかけてきただけなんだよ」