冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
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『石碑は薔薇園の側だ』
そう告げられて向かうと、話通り、荒れ果てた薔薇園の近くに腰の高さほどの石碑が見えた。アスランが手入れしているだけあってそれほど汚れは目立たない。
例の作業着に着替え、準備万端。
絞った雑巾で丁寧に盤面を磨いていくと、太陽の光を反射して黒い石がキラキラと輝いた。
「おや?あなたはランシュアさんではありませんか?」
背後から聞こえた低い声。はっ!として振り向くと、視線の先に見えたのは黒いローブをまとったダルトンさんだった。
驚いたような顔をしている。それもそのはずだ。甥が妃候補に選んだ娘が、ツギハギだらけの作業着で清掃に精を出していたのだから。
「どうしてあなたが掃除を?まさか、陛下に命じられたのですか?」
「いいえ。私が望んでやっているのです」
「ほぉ。妃候補を召使いのように扱っていると小耳に挟んだことがありましたので、てっきり。……しかし、仮にも妃候補ならば、そのような行為は控えた方がよろしいですよ。そんな雑用、使用人がやる仕事でしょう」
雑用と一括りにされ、動揺が走る。
石碑の手入れは雑用なんかじゃない。アスランから話を聞き、今までよりもずっと、革命は忘れてはいけない過去だと知った。兄とともに革命軍に属していたはずのダルトンさんは、人一倍その思いが強くてもおかしくないはずなのに。