冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
アイジン?
呼吸を忘れた。
飛び出ると思っていなかった単語を聞き、動揺を抑えきれずに口から言葉がこぼれる。
「冗談ですよね?だって、先代の王も王妃も、レウル様が嫡男であると正式に発表したはずです」
「表向きはな。俺も十五のときに書斎で写真を見つけるまでは知らなかった。両親揃って俺を王子だと認めていたから、血縁を疑う人は誰もいなかったんだ」
とても信じられない。
たしかに、先代の王が書斎に隠すかのように一枚の写真を後生大事に持っていたのは不自然である。
レウル様の話では両親の家系をさかのぼっても青い瞳の遺伝子はなく、父を問い詰めると、本当の母親の存在を認めたらしい。
一番重要なのは、レウル様の実母が側室ではないということだ。
正式に王宮に迎え入れられた女性の子どもならば王位継承権がある。しかし、人知れず逢引していた愛人の子となると話は別。周囲に知られれば、国王の座は剥奪されるだろう。
「どうして出生を隠して嫡男だと発表したのでしょう?言い方が悪いかもしれませんが、お母さまが側室になっていれば問題はありませんよね?」
「それはできなかったんだ。俺の母親は、革命が成った直後に殺された。毒で育てられた薔薇の刺に触れたせいでね」
「薔薇の刺?」
「ああ。送り主は不明で、直接手を下していないぶん足がつかない。同封されていたローズティーにも毒が仕込まれていたから計画的な犯行だとは思うけど、父上は彼女の存在を公にしていなかった。どこから情報が漏れ、なぜ標的にされたのかもわからないままなんだ」