冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
動揺の中、頭上から無意識に漏れたような声が聞こえる。
「本当に君は……口封じをしても構わないなんて、普通は言わないだろう」
少し怒っている?
どうしてかしら。口下手なせいでうまく伝わらなかったのか?
救ってくれた恩に報いるためにも、今まで以上に気を引き締めて仮初めの妃候補として勤めようと思った。ズケズケとこれ以上を知りたがったり、信用してくれなくても不服に思ったりしない。
そう伝えたかっただけなのに。
顔を上げると、至近距離で視線が交わった。想像以上の近さだ。頭に浮かんでいた言葉が一瞬で吹き飛ぶ。
「ビジネスパートナーに対してこんななら、情を抱いた相手にはどんな顔をしてくれるんだろうな」
興味を惹かれたように呟く姿はいつもと百八十度異なり、感情が手に取るようにわかる。好奇心に駆られた顔だ。
抱き寄せたまま片手で輪郭をなぞられ、ぞくりと体に甘い痺れが走った。
「口封じをしてもいいか?」
「えっ!」
脳裏をよぎるのは昨夜の短剣。
すると、言葉をつまらせたのを見て心中を察したらしい彼はもどかしげに眉を寄せる。
「鈍いな。こういう意味だよ」