冷酷陛下は十三番目の妃候補に愛されたい
戸惑いに揺れ、無言で見つめ返す。
冷酷非情の青い薔薇でも、本心を見せない微笑の仮面でもない、魅惑的な表情が目の前に近づいた。
「見定め期間、終わりにしようか」
「出ていけという意味ですか?レウル様の気が変わるまで私をこの城に置くという話でしたよね?」
「俺が言いたいのはそうじゃない。君を本当の妃として迎えたいんだ」
突然の宣言に頭が真っ白になる。
言葉の意味が脳に届くまで数十秒。今、さらっとプロポーズされた?
「本気ですか?」
「嘘でこんなセリフは言わないさ」
「私を好きになったわけでもないのに」
「世間の好きの定義を当てはめられても困るな。今の俺にとって、君以上の人はいないよ。きっとこれからも。君に本気になりたい」
ドキリとした。
以前エルネス大臣は『どんな女性もことごとく追い出してきたレウル陛下は相手選びに慎重にならざるを得ない立場ゆえ、恋愛に本気にならないようにしているのではないか』と言っていた。
それが本当なのだとしたら、今の発言は天地がひっくり返るほどの大事件だ。
ずっと王としての職務を全うするためだけに生きてきた彼が、初めて自分から手を伸ばした。“本気になりたい”と口にした。
もしも城の人達が聞いていたら、見定め期間のバックアップなんて比じゃないほどのお膳立てをされるだろう。