エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「お呼びでしょうか」

 デスクの前に歩み寄り短く尋ねると、香川検事正が、すくい上げるような目で俺を見る。それからクッと口の端を引き上げて笑い、彼は言った。

「津雲、お前にな……転勤の話が出ている」
「えっ?」

 転勤……。検事にとっては二~三年に一度命じられる、決して珍しい話ではないが、通常なら一月に打診があるはずなので、想定外だった。

 少なくともあと一年は東京にいられると思っていたのに、和香菜になんて話したら……。

 突然の話になにも言えないでいると、検事正がニヤニヤと俺の顔を覗き込む。

「やっぱり、お前……噂通り、恋人ができたんだろう。しかも、相手はこの地検にいる」
「……ご存じだったのですか」
「そりゃ、急に人間らしく変わったお前を見ればわかる。彼女と離れるのは心苦しいだろうが、この人事はきっとお前をまたひと回り成長させる」

 ……つまりは、俺と和香菜を離れさせるため、か。

 致し方ない。別れろと言われるよりはましだ。

「行き先はどこでしょうか」

 どんな辺境であれ断ることなどできないが、あわよくば近場であってほしい。

 俺の望みを見透かしたかのように、検事正は眉を曇らせ、言いにくそうに告げた。

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