エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

「いいね~。ずっと覇気のない舞美ばかり相手にしていたから、気が強い女は新鮮だ」

 人を馬鹿にしたようなその態度に、思わず私は彼の前に立ち、声を張りあげて言い返す。

「そうやって余裕ぶっていられるのも今だけよ。すぐに警察がこの場所を見つけて、あなたは逮捕される。そして、鬼畜とよばれる検察官に起訴されて、今まで犯してきた罪を全部暴かれるんだから!」
「はぁ~。うるせえな。……黙らせるか、もう」

 時田がイラついた声で呟き、床に落ちていた鉄パイプを手にする。それを野球のバットのように持つと、ブンと風を切って素振りした。

 ゾッとして思わず一歩後退したが、ここで負けたくないとなんとか歯を食いしばる。

「……殴りたいのなら殴ればいい。またひとつ罪の数が多くなって、そのぶん罰も増えるだけよ」

 恐怖を堪えながら、私は強気な態度で時田を睨みつける。その反応が意外だったのか、時田が若干ひるんで瞳を揺らした瞬間だった。

「時田さん、パトカーの音が!」

 入り口の見張り役がひとり、焦った様子でそんな大声をあげた。耳を澄ませると、たしかに遠くからパトカーのサイレンの音が近づいてくるのが聞こえる。

 時田は「チッ」と舌打ちし、手にしていた鉄パイプをカランと床に放った。

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