エリート検事はウブな彼女に激しい独占愛を滾らせる

 不意に津雲さんの手が私の顎を掴んで、強引に上を向かされる。津雲さんが身を屈め、その端整な顔がゆっくり近づいてきた。

 えっ? 嘘、まさか、こんなところでキス……? 

 驚きはしたが、抵抗はせずに自然と目を閉じた。

 そして、心臓がばくばく鳴るのを耳の奥で聞きながら、彼の唇が触れるのを期待していたのに――。


「……するわけないだろ、ここで」


 冷めた声とともにスッと顎から手が離れ、彼は無理やり私の体をぐい、と横に押してそのまま執務室を出て行ってしまった。

 な、な、なんだったのよ、今のは……。

 急に気が抜けた私は、へなへなと床に座り込んでハッとする。

「話……できなかった……」

 ってことは、こんなぐちゃぐちゃな心を抱えたまま、実家に帰って年末年始を過ごすの?

 控えめに言って、最悪だ……。


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