ウブで不器用なお殿様と天然くノ一の物語
お殿様、くノ一を城に連れ帰る。

「彬良⁇
え、どうして?
まだ帰ってなかったの?」

「……帰ったよ。
車で来た。乗って。」

どうしても、先送りしたくなかった俺は、一度自宅マンションに戻り、くノ一カフェまで車で迎えに来た。

「車だと遠いのに…。」

もちろん、電車の方が早いのもわかってる。
でも、それじゃ迎えにならないし。

「メシは?」

「夕方、まかない食べたよ。彬良は?」

「俺も食べた。実家に寄ったから。」

そう。
実家で少し話をして来たんだ。

「そっか。良かった。
そんなに遅くないけど、待ってもらってて、お腹空いてるんじゃ申し訳ないからね。」

くノ一カフェは意外と早く終わる。
ダンスの時間が決まってるから、客もそれに合わせて来店する。
閉店後、2軒目で呑み直す客が多いみたいだ。
実際、まだ9時にもなってないからな。

どこか、話ができるところを考えたが、
デートの経験もない俺には、いい案が浮かばない。
車の中で話すか…。
それとも……


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