チヤホヤされてますが童貞です
それから数時間。

幸い物が少なかったため、簡単に引越しができた。

「………えっと…」
「聞いてないです…」

新しい引っ越した先のマンションに顔を青くする人間が2人。

「なんで…佐嘉峰さんが…ここに…?」

「同居した方が女性に慣れるかなぁなんて!」

てへへ、と笑いながら言うお調子者さながらの服部に対し、突っ込む言葉も浮かばず…。
率直な感想として『ぶっ飛んでる…』と溢した。

「マネージャー同士で決めるの…私は反対です…」

不服そうにしている凛を目の前に、肩身狭い思いをする綾斗。

(何とか出てかないと…)

頭の中で色々考えていると、ポンっと肩に服部の手が置かれた。

「こいつ、童貞だから女性と上手く絡めないみたいで。凛ちゃんも男性が苦手だし、丁度いいからお互いに成長するために頑張って欲しい。」

「え…?」

(佐嘉峰さんも異性慣れしてないタイプ…?)

初めて知った事実に、綾斗は目を大きくさせる。

「あれ?知らなかった?今日の演技、特にラブシーンなんて凛ちゃん顔真っ赤にしてたじゃん。」

「あれも演技じゃ…」

「これだから経験のない男は…」

チラリと横目で凛を見つめると、下を向きながら顔を紅潮させていた。

(え、本当に男の人苦手なんだ。なんか親近感…)

「今回2人がダブル主演のドラマの主人公達、渚と愛華は同居してるでしょ? 役作りにも良いんじゃないかなぁなんて。もし凛ちゃんが綾斗に襲われそうになったりしたら危ないし、SOSで駆け付けられるようにマンションの一階に僕も住んでる」

「確か元々服部さんの部屋でしたよね…。ここ…。」

「このためだけに一階に越したわけじゃないけど…まぁ……上手くいってほしいんだよ。僕たち事務所の人間はね。」

「…………」

「男慣れ、女慣れして、立派な俳優になれるように応援してる。」

『じゃあ、僕はここでー!』と、言い残してパッと服部は去って行った。
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