レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
「レオン様……ですか?」
お部屋の中の立派な肘掛け椅子に座って待っていらっしゃったのは,わたしもよく知っていて,恋しお(した)い申し上げている"レオン様"だった。
……いえ,普段とはお召しものも,まとっていらっしゃる雰囲気も違うけれど。
「そうだ。俺が皇帝レオナルドだ。そなた,今までずっと気づかなかったのか?」
「……はい,まったく」
今までは暗くなってからお会いしていたから,分からなかった。
今はまだ明るいから,はっきりと分かる。彼の髪の色はただの金髪ではなく,皇族エルヴァ―ト家の証・美しい蜂蜜色だったのだ。
「どうして身分を(いつわ)って,わたしに会いに来られていたのですか?」
「お忍びだ。俺はどうも,皇帝としてふんぞり返っているのが(しょう)に合わなくてな」
「はあ……。それだけですか?」
リディア陛下以降の歴代の皇帝陛下が,お忍びでの外出好きということはわたしも知っていたけれど。まさかレオン様までそうだったなんて!
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