レーセル帝国物語 皇帝陛下に見初められた侍女見習い
「そうだが?」
何でもないことのようにレオン様は仰るけれど,なんて低姿勢なのかしら。
皇帝なのだから,お父さんをお城まで呼びつけて「娘を側室に迎えたいのだが」って決定事項のように仰った方が簡単なはずなのに。
「俺が(ちち)(ぎみ)を呼びつけた方が,確かに簡単だな。だが,そなたの今後の人生を左右する決断を(せま)るのに,権力を振りかざすようなことはしたくないのだ。そなたの立場を悪くはしたくないからな」
「レオン様……」
この方のお言葉には,わたしへの思いやりが(あふ)れている。ご自身の権力よりも,わたしの立場を重んじてくれているなんて。
……本気なんだわ。決していい加減なお気持ちで,わたしをどうこうしようとしているわけじゃない。そう思えた。
「信じてくれ,イライザ。俺にとっては,どちらも大事なんだ。アンのことも,そなたのこともな」
「ええ,信じています」
わたしはキッパリと言い切った。この方の愛を信じようと思ったのだ。
以前,レオン様ご自身から聞いたもの。「惚れた女にしか,気安く触れたりしない」と。
アン様のことは本気で愛していらっしゃるらしい。けれど,わたしのことだって本気で愛して下さっているはず。だから側室に選ばれたはずだもの!
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