弟にしないで。
…。
困らせた?
不安になって、
冗談です、とかいうべきか?と口を開こうとすると、
「れいちゃんっていい匂いだよね!香水なに使ってるの?さっきカーディガン羽織った時にも思ったんだけど!」
…はぁ?
さっきまでの赤い顔はどこへ行ったのか、
キラキラした目で腕の中に抵抗もなく収まって、
その上顔をすり寄せながら聞いてくる。
…ほんと、
弟、なんだな、俺…
「れいちゃん?きいてる?」
「聞いてないです。知りません。」
少し冷たい言い方になったかも。
そう思った時には、
腕の温もりは無くなってて、
桃奈さんはスッと離れてしまった。
…全身の血の気が引く感じがする。
これ、完全にやってしまったやつだ。
「…ごめんね。気をつける。」
俺のカーディガンの袖をきゅっと小さな手で掴んで、
下を向く。
泣かせてしまったかもしれない。
焦って近寄ると、
「れいちゃん、ありがとう!返すね!」
桃奈さんがいつもの笑顔でカーディガンを脱ぎ始める。