離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「特定のお相手がいるってわかれば、冷めてくれそうな気がしますけど」
「んなもん作ってる暇ねえよ、会社のことで手一杯、やっとここまで来て社員も増えたのに」
社長がすっかりやさぐれモードになってしまった。
そう、社長は今とても忙しい。数あるシステム開発会社の中で、勝ち残ろうと思えば経営者としての手腕を問われる。その中には、格上の相手……時に人であったり会社そのものであったり、とにかく格上相手に如何にうまく話を進めるかの交渉術も必要だ。
人好きする外見と人格は間違いなく役立っている。そこに堂々と公表できるパートナーでもいれば、問題解決に近づきそうなものなのに、本人は恋愛などしている余裕はないと言う。
「……社長、毎日晩酌でもしてみません?」
「ん?」
「酒の肴に、高カロリーのピザなんていかがですか」
「……話の意図が見えない」
「ビール腹にでもなれば見た目に釣られてくる不届きものは消えるかと思いまして」
至極真面目な顔でそう言ったら、思い切り渋い顔をされてしまった。
「絶対いやだ」
「冗談です」
秘書として、そんな不健康なことはさせられない。本当に冗談だったのだが、瀬名社長はなんともいえない顔の後、頬杖をついて肩を揺らし笑った。
「富樫さんって冗談を本当に真に迫った顔で言うから、びっくりする」
「笑っていただければ幸いです」
慇懃に頭を下げて、それから私も笑う。彼の生活や仕事ぶりを見ていると、ストレスが溜まらないはずはないので、ちょっとでもガス抜きになればと思う。