離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
その言葉に、うぐ、と変な声が出かかった。
「心配しなくていい、連絡は取れるようにしておくから」
「……さようでございますか」
どう返答すればよいものか迷って、結局それだけしか言えない。しかし気まずい私と違って、和也さんの表情は何か吹っ切れたようなものになっていた。
「約束の日だが、家でいいか?」
「あ、はい、そうですね」
本当は、書類を書くだけなら外で会っても構わないのだが。なんとなく、彼の口調が一応尋ねてはくれているものの強いものだったので、そのまま従ってしまう。
「離婚届も用意してきてくれるんだろう? 佐伯から聞いた」
いや、何、それは知らない。けど、これは持っていった方が良い流れなのだろうか。
「当日、お持ちします」
確かネットでダウンロード出来たはずだ。佐伯さんにパソコンを借りて探してみよう。
「ありがとう、助かる」
「では、仕事が終わって、食事を済ませてから伺います」
「ああ、わかった」
「失礼いたします」
一礼して、執務室を出る。そのはずが、なんとなく足が動かなくて和也さんの顔を見つめてしまった。
「どうした?」
不思議そうに尋ねられて、慌ててもう一度礼をし今度こそ執務室の外へ出た。そこでまた、ぼんやりとする。
――そうか。
この三か月、ほんのちょっとだけ夫婦の真似事のようなことをしてしまった分、感傷的な気持ちを抱いてしまうけれど。
和也さんは、私が望んだとおりにもう前を向いたのだ。それを思い知ったような気にさせられた。
そうして、約束の離婚予定日はやってくる。