離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
私を呼んだ社長の方へ、半身振り向く。彼はにっこりと笑った。
「終業後、いつもの場所な」
ひくっと私の頬がひきつる。つまりこれは、さきほど言っていたストレス発散へのお誘いだ。いや命令か。
「……承知いたしました」
機嫌よさげに椅子の背にもたれかかった彼にもう一度会釈をして、今度こそ社長室を後にした。
少し先に行っていた彼女を追いながらオフィス内を歩き、すぐに佐伯さんのパソコンのあるデスクに着く。彼女の椅子の隣に、丸椅子が置いてありそこに腰かけた。
ワンフロアのオフィス内には各自の机とパソコンがあり、いくつかのシマに分かれてパーティションで区切ってある。真新しいレンタルオフィスだ。以前の場所は階下にあり、社員が増えて手狭になったので、最近スペースを増やしたばかりだった。
数字でどうしても合わないところがある、というのでふたりで数字を細かいところまで追いかけて、計算が合うまでチェックしてひと段落した時だ。
「すみませんでした、お邪魔してしまって」
ふふふ、と意味ありげな笑みを浮かべられた。
「邪魔って?」
「今晩はデートですか?」
どうやらさっき呼び止められた時に言われた言葉が、しっかり彼女の耳にも届いていたらしい。
「違います、ストレス発散に飲みに誘われただけです。あ、だったら佐伯さんも一緒に」
「えっ、ダメダメ、社長に邪魔するなって恨まれちゃう」
一応私が半年だけ先輩なのだが、同い年のせいか仕事の話以外になるとわりと気安い言葉遣いになる。私もその方が楽でいい。
気が合うのだが、いかんせん、彼女が来てから誤解されることが多くなった。
「違うって言ってるのに」
社長が私を飲みに誘うのは、滝沢さんが捕まらない時だけだ。何度言ってもわかってもらえない。