離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
◇◆◇


 一週間の休暇は彼の希望通り、ふたりきりでのんびりと過ごした。ただ、私の抗議の結果閉じこもるのは撤回。買い物に行ったり食事にでかけたりと、普通の夫婦の休日を満喫することになった。
 初めて夫婦らしい時間を過ごした戸小坂駅を思い出して、ふたりで出かけたのが最終日のこと。


「心機一転で引っ越すのもいいかもしれないな」


 あの日は私の引っ越し先を探すというのが口実だった。それを思い出してのことだろう。


「いいかもしれませんね。私は戸小坂、好きですよ。あのお店のオムライス、美味しかったし」
「ああ、いい雰囲気の店だったな」


 特別仲が良いというわけでもない、だけど長く連れ添ったのだとわかるご夫婦のあの雰囲気が、私はとても好きだった。自分の人生を考える、ちょうどその時期に出会って印象に残ったご夫婦だからだろうか。


「……今から行くか?」
「いいですね。そこでお昼にしましょう」


 行先が決まって、次の岐路を店の方角へと曲がった。
 こうして、いつも同じ方向を見ていられたらいいと思う。何があっても、乗り越えていこうと言ってくれた和也さんとなら、出来る気がした。私たちも、何年経ってもすぐ隣に寄り添っていられますように。それだけでも奇跡のようなものだと、私は良く知っている。
 繋いだ手を、思わず強く握りしめた。すると、同じ強さで彼も握り返してくれる。隣を見上げて、微笑んだ。


「近々、母に会いに行こうかと思います。一緒に行ってくれますか」


 数日かけて、ゆっくりと決めた覚悟に、彼は当然とばかりに頷いて、微笑みを返してくれた。この微笑みが、きっと私を守ってくれる。そう思えた。



END


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