離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
 この人は、女性にはみなこういう扱いをするのか。今まで知らなかったが、だとしたらこれまでのモテっぷりには多少彼の責任も含まれるのではないだろうか。いやだって、これ、勘違いする。勘違いしてしまった彼女たちに同情する。

 大丈夫、私は勘違いしないから!

 普通に「ありがとう」と言えばいいのに、意識しすぎてしまって言えず、ただただ足元を見る。無事に最後まで降り立ったところで、今度はそのまま手を引かれた。


「散策してみよう」
「……あの」
「桜の時期なら見事だっただろうな」


 なんで手を、と抗議するよりも先に話を振られ、彼の視線の先を追う。並木のほとんどが確かに桜の木のようだ。風で落ちたらしい葉を見れば、桜の特徴である縁がギザギザとしたものだった。


「お花見客が多そうですね」


 会話に応えながらも、繋がれた手をどうしたものかと頭を悩ませる。しかし、時間を置けば余計に指摘しづらくなってしまった。

 ……もういいや。向こうが繋いできたんだし。

 いまさら手を放して欲しいとも言えず、考えるのも疲れて諦めた。何せこの頃、和也さんといると戸惑うことが多いもので。
 揺れる思考を手放して、引かれるままにゆっくり歩くことにした。

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