離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「本当に助かりました。戸小坂駅周辺を参考にして、引っ越し先決めますね」
気持ちをちゃんと、立て直さなければ。
背筋を伸ばして、秘書仕様の笑顔を浮かべる。すると、彼が眉間の皺を深くしながらも、私に向かって手を伸ばした。
「いずみ、俺は」
その手が触れる前に、ポンと柔らかな電子音と共にエレベーターが到着する。私は彼の視線を振り払うように、すぐにエレベーターに乗り込んだ。
……どうして、今になって。気が緩んだのだろうか。
この三年、私も和也さんも良好な契約関係を保つために互いの距離は大事にしてきたはずだ。ずっと上手くいっていたはずなのに、どうしてこうなった。
それに、和也さんには大事な人がいると、滝沢さんとの会話で知っていたのに。知ったその時は、なんとも思わなかったのに。
――あいつは、年下の幼馴染をすっげえ可愛がっててさ。だから、学生の時も噂は色々あったけど結構誠実で堅実なやつなんだよ。
和也さん大好き滝沢さんは、話しをしているとすぐに和也さんとの昔話になる。その時に、彼に可愛い幼馴染がいることは聞いていた。その彼女も社会人になって忙しくなり、しばらく疎遠だったのが、近ごろ連絡を寄越してきて嬉しそうにしていたと、それも滝沢さん情報だ。
あの人はもしかすると、私が変な勘違いを起こさないようにわざとその話をしたのかなと、ふと気づく。