離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
「いえ、もう部屋で休みます。社長も休んでください」
「いずみ、待って」
「お疲れ様でした」
笑顔でお辞儀をした。後は明日の朝、仕事に行く時間まで顔を合わせなければ元通りだ。ほっと息をついて自室のドアを開けようとした、その時だった。
「ちっ」
――え。
舌打ちのような音が聞こえて、驚いて足が止まる。だって、和也さんが舌打ちをしたところなんて、多分聞いたことがない。ドアを背に振り返った途端に、どんと顔の両サイドで音がした。
「ひゃっ?」
咄嗟に目を瞑って肩を竦め、それからぱちぱちと瞬きをする。
「え?」
すぐ目の前に、和也さんの服の襟元が見えた。少し目線を上げれば、喉元が見えてそれから顎。それ以上先は、目が合うのが怖くなって代わりに横へ逸らす。右と、左。両サイドとも、和也さんの腕が私の背後のドアに突かれていて、今自分が囲われている状況なのだと気が付いた。