離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
……なに、でしょう、これは。
今日は暑かったから、ほのかに汗の匂いがした。ちょっと手を伸ばせば、私の手が彼に触れてしまいそうなほどに近い。
どくどく、と心臓が早鐘を打つ。頭上から深いため息が落ちて来て頬に当たり、びくっと肩が跳ねた。
「……逃げないで聞いてくれ」
いら立ちを無理やり飲み込んだような、低くて掠れた声だった。
「……別に、逃げては」
「じゃあ、聞け」
「疲れたから休みたいだけです。お仕事の話なら明日に聞きます」
珍しい命令口調が、ますます追い込まれているような気持ちにさせる。早くこの状況から逃れたくて、つい返事は早口になった。彼は再びため息をつき黙り込んだけれど、腕の囲いから解放してくれそうにない。
しばらくして、ふっと笑うような吐息の音が聞こえた。
「俺が何を言いたいか、わかってるから逃げるんだろう」
「ちが……っ」
違います。知りません。
そう言おうと勢いで顔を上げてしまった。すぐ目の前に、和也さんの苦笑いがあって。軽く腕を曲げて、更にそれが近くなった。