離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす

 逃げたい。

 頭の中は混乱して、そればかり考えている。だけど、和也さんは逃がしてくれそうになくて、ありえないくらい近い距離で私の反応をじっと見ているようだった。

 わかっているから、逃げる?

 和也さんの言葉を、頭の中で反芻する。
 今日一日、一緒にいて疑問は確かに湧いた。本当に、離婚するつもりでいる距離感だろうかと。だけどその割に、駅周辺のマンションのことや住みやすいかどうかなど、ちゃんと考えてくれているような気がする。

 それに、離婚しないとまずいでしょう?

 そのはずなのに、和也さんの態度が一致しないことに、更に混乱させられる。落ち着いて考えたい。だから、今は部屋に帰りたいのに。


「……いずみ」


 低い声が耳朶を打って、ゾクゾクとしたものが背筋を走った。これ以上はもう無理だと、部屋に逃げ込もうと後ろ手にドアノブを探す。指先が触れて、ノブを握ったときにかちゃりと音がしてしまう。

 途端に手首を掴まれて、やっぱり逃げられなかった。

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