離婚予定日、極上社長は契約妻を甘く堕とす
息苦しさを感じて、すは、と慌てて深呼吸する。すぐに、どくどくどくと大きな心臓の音が聞こえ始めて、慌てて胸を押さえた。
「え……、どういうこと?」
離婚予定日までに、和也さんがどうして離婚したくないかを私に考えろってことだ。
いや、でも、理由があるならあるで、教えてくれたらいいじゃないか。まだややこしい取引先がいる? また断れない先からの縁談が来ているのだろうか。それとも、もう少し結婚しておいた方が、各社に向けて心象が良い?
つらつらと会社関係で可能性を考えて、だけどすぐに違うと打ち消した。
三年前のようにどうしても抗えない相手が今はいるわけではない。社内も、いざ離婚したとなれば多少ざわつきはしても円満離婚であればすぐに落ち着く。今は、三年積み重ねただけ揺るがない土台がある。
――それに、多分、そういうことじゃない。
もしかして。まさか。という、頭を過る仮説にみるみる頬が熱くなる。息も、なんだか苦しい。
今日一日、ふたりで過ごした時間の意味。彼が誘った。ただ引っ越し先を探して、というには不自然な時間。それらがあって、あの言葉。さすがの私も、そこまで鈍くない。
……仕事は関係なく、離婚したくない。夫婦としてやりなおしたい。そう、思ってもいいのだろうか。