暴君陛下の愛したメイドⅠ《修正版》
けど、弟が危険を承知でこんな事を言っているのに。
最初から諦めてしまうなんてどうかしているわ。
気を取り直すと私はグラントに背を向けて、再び走り始めた。
「誰か……ッ」
息が上がる。
喉も痛い。
光は直ぐそこまで見える。
遠くから聞こえる剣のぶつかり合う音からして、グラントは今必死に戦っている。
お願い……。どうか無事でいて。
心の中で弟の身を案じながらも、光の方に向かって足を進める。
「…あ、おい!」
弟の焦った声が聞こえる。
一体どうしたのだろうと振り返ると、三人いたその内の一人がグラントの横を通り過ぎてこちらに向かっていた。
グラントは他の人の相手でどうする事も出来ない。
「……い、嫌…ッ」
出口はもうすぐだと言うのに。
ここで捕まるわけにはいかない。
「はぁ……はぁ……ッ」
足音が直ぐそこまで聞こえる。
気になって後ろを振り向くと、直ぐそこまで男が近づいて来ていた。
手を伸ばせば届きそうな距離に焦る。
「い……嫌……ッ!」
捕まってしまう恐怖から思わず目をギュッと瞑る。
誰でも良いから……!助けに来て……ッ!
ドンッ。
強い衝撃が私を襲う。
「キャ…ッ!」
もの凄い衝撃の割に痛みはなく。
そして、何より私は誰かに抱き着いていた。
……何この感触。
人である事は間違いないみたい。