【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
その話が出たのは、珍しく父が早く帰って来ていて、弟の大地も都内のマンションから久しぶりに実感に帰って来る日で家族団らんを過ごしている時だった。
大地は現在父の仕事を手伝っている。あんな泣き虫でヘタレだった弟がこの1年で立派な社会人になった事は中々に感慨深い。
そしてその大地が帰って来るという事で母は気合をいれて夕食を作っていた。
テーブルには大地の大好物ばかり並んでいた。
母はお料理と裁縫とフルートが得意な美しい人だった。いつも柔らかい笑顔を浮かべて父の3歩後ろを歩くような上品な女性。
そして父と仲が良く未だにふたりで舞台や演奏会などに出向く。穏やかで優しい両親。それは私の自慢でもあったのだが…。
「やっぱりお母さんの料理はうまいなぁ。一人暮らししてるとついついコンビニか外食に偏りがちでさぁ」
「あら体に悪いわよ。もっといっぱい食べて。大地少し痩せたんじゃないの?」
「面倒になるとついつい飯も食わないで寝ちゃうからさ」
「それはいけないわよ。ほら野菜もきちんと食べなさいよ」
「はーい」
社会人になったと言っても、母親の前ではまだまだ子供。
さり気なく人参とピーマンをよけている大地を見て、母は「コラッ」と叱咤する。
今日も父はその様子を穏やかな表情で見つめていた。
「全くお前はいつまで経っても子供だなぁ」
「親父までー、でもお母さんこう見えても仕事は頑張ってるんだぜ?
結構皆から注目されてんだから」
「はいはい。それはすごいわね。これからもお父さんを見習って頑張って頂戴ね」
「いや、でもお母さん実際大地はよくやってくれてると思うよ。
菫も菫で頑張ってるしなぁ?ボヌールの評判も上々みたいじゃないか」