【完】Dimples 幼馴染のキミと僕
突然父に振られ困惑する。嫌な予感がする。
隣に座る大地の眉がぴくりと動いた。
「お前も今年で26だ。早すぎる事もあるまい。
西城さんの事は縁がなかったと思って
お父さんの知り合いで飲食店を営む人が居てね、是非菫に会いたいと言っているんだよ。
まだまだ若い経営者だが腕は確かな子で、とても良い子なんだよ」
「私に……?」
父の隣で母はにこにこと笑っている。
西城さん側から縁談の話が破談になった事に対し、ふたりは酷く気を遣っていたが
私は西城さんの事があって、新しい縁談には乗り気になれなかった。…いや実は心の中で唯一の反抗だったのだ、自分で選んだ人と結婚したいと言うのは
それをこんな形で、父からこんなに早く新しい縁談の話が持ち込まれるとはさすがに想像していなかった。
「えー?!ねーちゃん結婚すんの?つかサイジョウさんって誰?誰?」
「大地は黙っていなさい。
大倉さんといってね、年齢は菫より3つ年上でお父さんと同じで自分で会社を立ち上げた若き経営者なんだ。
菫の好きなイタリアンのレストランのオーナーで、とても素敵な人なんだよ」
「え…えぇ…」
「菫は西城くんみたいな人がタイプなんだろう?
大倉さんも身長も高いし、顔立ちも整っている。それに性格もとても良いんだよ。
どうだい?一度会ってみても」
「そう…ね…」
父の言う事は絶対だ。そしてこうまで父の前ではイエスマンになってしまう私に対し、不満をぶちまけたのは意外にも大地の方だった。
大地はつまらなさそうに椅子にもたれ、口を開いた。