私に恋する可能性



でも…その心配は必要なかった



「間部ひなた!」





ぐいっ



後方から肩を掴まれ、引き寄せられる


「はぁ…やっと見つけた」





「多岐くん!」


さっきまであった帽子はかぶっていない

少し乱れた髪と服装、汗を滲ませて私の肩を寄せていたのは他でもない多岐くんだった


「気がついたらいなくなってたから焦った」


あ、焦ってくれたんですかぁぁ!?


「…何やってん…あ」


多岐くんの目が私から黒髪の男の子に移った





「お前…茂木?」


も、もぎ?


「…多岐」


え、あれ?


「知り合い?」


多岐くんは少し目を丸くしていて、茂木?くんは…

あれ?さっきと違くない?

無表情…というより、なんかちょっと冷たい目で私たちを見ていた


「知り合いっていうか、同じクラス」


クラス!?


え、あ、じゃあ同じ学校!


だからなんか見たことあったのか!



「へー珍しいねー茂木って祭りとか来るタイプなんだ」





「…俺は親戚の手伝いに来てるだけ」


「へー…てか、なんで間部ひなたがここにいたの?」


「…埋もれてたから助けた。お前の連れ?」


「俺の連れ。埋もれてたんだ」


う…お恥ずかしい


「そいつ足怪我してる…連れならそれくらい把握しとけよ」





気付いてたの?茂木くんとやら


は!


それより多岐くんにこれ心配かけるわけには!


「大丈夫ですよ!まだ歩けます!」


張り切ってそう言い、多岐くんを見上げる


「元気だけはあるよね間部さん」


多岐くんが少し柔らかく笑った


だけとはなんだ、だけとは

< 106 / 270 >

この作品をシェア

pagetop