翼のない鳥
パタン、と扉が閉まって、真っ先に真秀が茜に食って掛かった。
「お前何言ってんだよ!弱みとか、そもそもなかったらどうすんだよ。」
それでも茜は顔色ひとつ変えない。
うん、さっきまでの律とのにらみ合いに比べたら、真秀の睨みなんて可愛いものかもしれない。
「あるよ。アイツには、とんでもない秘密がある。」
赤の瞳を爛々と光らせる茜に、背筋が寒くなった。
え、なんか今日の茜怖いんだけど。
「俺は勝算のない勝負なんてしねえの。」
口調はいつものように軽いけど、目は笑っていない。
「―――2度と忘れたとか言わせねえから。」
いつもより数段低い、不機嫌さを隠しもしないその声に。
ああ、やっぱ根に持ってんじゃん。
俺たちは初めて、琴川律に同情した。
牙をむいた悪魔。
最後に笑うのはダァーレだ。