愛してるって気持ちだけじゃ届かない
今回も、何かあったのだろう…
愛梨は、私と同じセフレという立場で好きな男の側にいるのだが、相手が悪い。
慧と悪友である透に惚れてしまったのだ。
恋に本気になれない男には何人もの女がいて、愛梨もその1人になったと聞いた時は、複雑な気持ちになった。
社会人になり表面上の付き合いしかしてこなかった私だが、セフレなんて辛い選択を選ぶ愛梨が、自分と重なり、ついついお節介をやいてある場所に電話をかけた後、愛梨を飲みに誘った。
いつも利用している店のボックス席で、彼女の話を聞くと、予想外の婚約者出現話だった。
友人とはいえ、透に向ける怒りはおさまらない。
だが、愛梨の心は透しか見ていないのだ。
好きな人の幸せの為に身を引こうとする姿は痛々しい。
口には出さないが、透は愛梨を特別だと思っている。
だから、先に透に連絡したのだ。
『愛梨を泣かせて平気でいるなら、今日、愛梨に他の男を紹介してもいいわよね』
電話口で焦る透は、愛梨と連絡が取れないと言い訳するが、会う気があるなら方法はいくらでもあるはず。初めての恋に戸惑っている様子は、他人事だからか、なかなか面白い。
『愛梨に一目惚れした一途ないい男なのよ。今から1時間後にコンフォルトで待ち合わせしてるの。だから、絶対来ないでよ』